会社に入ると造園部という部署に配属となりました。主にサウジアラビアの
砂漠地帯の緑化事業を手掛ける部署です。当時はスワイディパークという大型
公園のプロジェクトが始まろうとしていました。当初の役目は現地で使用する
資材の調達です。サッカー場に敷き詰める人工芝や大きな日除けになる、直径
30メートル以上の巨大テント等を調達して、現地に送っていました。
半年が過ぎた頃に現地行きを許されました。成田からバンコク経由でサウジの
首都であるリアドに向かいました。飛行中に二か所で窓から乗り出すように地上
を眺めました。一か所はマレー半島です。マレー半島はミャンマー、タイ、マレー
シア、シンガポールなどの国で構成されていますが、窓から見える風景は一面の
濃い緑で、半島の隅々まで緑一色で覆われています。そして、飛行機の窓から
覗いたもう一か所はアラビア半島です。半島に差し掛かった所から、リヤド空港
の近くまで覗いていました。そして、そこに見えるのは、茶色の大地です。色は
茶色や灰色、同じ茶色でも赤っぽい色や黒っぽい色など、様々です。しかし、
一様に緑一つない荒涼たる風景でした。
空港を降りてロビーに着いた時、異様な光景に驚きました。床に黒い塊がたくさん
有り、それがうごめいているのです。良く観察すると黒い布で全身を覆っている
女性のようです。手の先以外は完全に布に覆われています。女性は5歳位までの
子供以外は全てその服装なのです。
会社の先輩が外で待っていてくれて、そこから宿舎に連れて行ってくれました。
宿舎は高い塀に囲まれた大邸宅といった感じの建物です。各人に10畳くらいの
部屋が与えられます。私は酒飲みなので、禁酒国サウジで暫く酒を飲まない生活と
覚悟していました。ところが、その後案内されたリビングでは、何と先輩たちが、
皆お酒を飲んでいるのです。聞けば、各種の密造酒が出回っているとの事で、禁酒
を覚悟していたのに、初日から酒が有りました。