私は中学校を卒業した後に、国立の工業高等専門学校という学校に入学しました。
父親を中学二年生の時に亡くし、母親の細腕で大学までは難しいだろうと考えて
いた時に、担任の先生が勧めてくれた学校です。国立で学費も安くて、奨学金も
受けていましたので、母親の負担が大きくないだろうという事で決めました。
学校に入って一番驚いたのは、何と同級生の皆がとても頭が良いことでした。
中学生時代は、一応学年のトップクラスの成績でしたが、新しい学校で出会う
同級生たちの多くは、今までに会ったことの無いほど、頭が切れるのです。
最も驚いたのは、既に中学生の時に、「前田の定理」という、数学の定理を
発案して、学会で正式に認められている同級生には度肝を抜かれました。
もう一つ驚いたことは、英語の授業で使用する辞書が英和辞典ではなくて英英辞典
だったことです。解らない英語を辞典で調べると、その意味が英語の文章で書か
れているのです。その説明文の中にも、また解らない単語が出てくるので、それを
繰り返していると、中々元の単語の意味まで辿り着けないのです。
その他、当時としては、まだ目新しいコンピュータが設置されたコンピュータ棟
という専用の建物がありました。そして何と、プログラムの一行(ワンコマンド)
を一枚のカード上の文字に穴をあけて入力するという方法を取っていました。
それを何十枚か重ねて読み込ませると、コンピュータが作動するのです。
そのような環境のなかで、ワクワクドキドキするような思いで、学生生活が
始まりました。